ボトックス治療:ニューロモデュレーションセンター:たかの橋中央病院
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バクロフェン髄注療法(ITB療法)
 IntraThecal Baclofen therapy

目的

 バクロフェン髄注療法とは、バクロフェン(商品名:ギャバロン髄注)という薬を作用部位である脊髄の周囲へ直接投与することにより、痙縮をやわらげる治療です。 状態に応じて薬の量を増減することにより、痙縮をコントロールすることができます。痙縮をやわらげることで、日常生活の活動の幅を広げたり、生活を豊かにすることを目的としています。

期待される効果

  • 固くなっていた下肢の筋肉・関節をやわらかく、動かしやすくする
  • 筋肉のけいれん(れん縮:スパズム)をおさえる
  • 胸やおなかの締め付け感をおさえ、呼吸を楽にする
  • 痙縮による痛みをやわらげる
  • 睡眠障害を改善する
  • 日常生活動作の改善

治療方法

バクロフェン髄注療法では、薬、ポンプ、カテーテル、プログラマを使用します。薬は、体内に植込まれたポンプ内に補充され、カテーテルを介して脊髄の周囲(髄腔)に送られます。

  • 全身麻酔下にて、体位は側臥位で脊椎の横から腰椎穿刺をおこないます。
  • 脳脊髄液の流出を確認した後、柔らかいカテーテルを髄腔内に挿入します。
  • 側腹部に約8cmの皮膚切開を行って、ポンプを埋め込める大きさの皮下ポケットを作ります。
  • ポンプの大きさは、厚さ約19.6mm、直径約74mm、 重さ(空のとき)約165gで、薬を入れるタンク(20mLまで)を内蔵しており、腹部皮下に植込まれます。
  • ポンプと髄腔内に挿入したカテーテルを接続し、すべてを皮下に植え込みます。
  • 薬がポンプからカテーテルを通して、自動的に少量ずつ出るしくみになっています。
  • ポンプの電池寿命は約5〜7年です(患者さんの薬の用量によって異なります)。
  • 電池が消耗したら、再度手術を行い、新しいポンプに交換します。
  • 担当医師が使用するプログラマ(小型のコンピュータ)でポンプの作動や電池残量を確認したり、ポンプから薬が出る量や速度を患者さんの状態にあわせて調整・変更することができます。
  • これらの操作は、おなかの上にコンピュータのコントローラーをあてるだけで済むため、痛みや刺激はまったくありません。

ITB治療方法

副作用

(1)ポンプシステムの異常による危険性(離脱症状、過量投与)

治療中に、何らかの原因でポンプからの薬の注入が突然止まったり、逆に大量に注入されてしまうと、身体に異常な症状があらわれます。病院で適切な処置を行わなかった場合には、生命をおびやかす状態へと発展する危険性がありますので、患者さん、あるいはご家族・介護者の方は、以下の事項に十分ご注意いただき、下記の離脱症状、過量投与の初期症状があらわれた場合には直ちに担当医師に連絡し、受診してください。

離脱症状※とその対応
※:薬が髄腔に正しく運ばれなくなった結果あらわれる症状

治療中、ポンプからの薬の注入が突然止まってしまったり必要量が注入されなくなると、薬の効果が感じられなくなり、痙縮が悪化してしまいます。さらにはかゆみ、血圧低下、感覚の異常、高熱、精神状態の変化(幻覚、錯乱、興奮状態など)、けいれん発作(痙縮の増強)などの離脱症状があらわれます。

【離脱症状の初期症状】

  • 痙性斜頸(けいせいしゃけい):首や肩の筋肉の張りによる異常姿勢
  • 小児脳性まひ患者の下肢痙縮(けいしゅく)に伴う尖足(せんそく)
  • 脳卒中などに由来する手足のつっぱり

【【離脱症状を防止するための注意】

薬の注入が突然止まらないように、以下のことを守ってください。

  • 担当医師に指定された受診日に、必ず受診する
  • ポンプのアラ−ム音が鳴った場合は、直ちに担当医師に連絡する
  • 日常的に繰り返す特異な動作や激しい運動は避ける

薬の注入が止まってしまう主な原因としては、カテーテルの不具合(特にポンプ接続部分の外れなど)、ポンプ内のお薬がほとんどなくなってしまう、ポンプの電池切れによりポンプが停止してしまう、などがあります。ポンプシステムの異常による危険性(離脱症状、過量投与)

過量投与とその対応

治療中、ポンプから薬が過剰に投与されると、非常に眠くなり、意識がもうろうとし、呼吸が弱くなるなどの症状があらわれます。この場合には、至急、薬の注入を止める必要があります。

【過量投与時の初期症状】

  • 非常に眠くなり、夜でもないのに眠ってしまう
  • 意識がもうろうとする、反応がなくなる
  • 呼吸が弱くなる、脈が少なくなる、体温が下がる
  • ふらふらする、起き上がる元気がなくなる(血圧低下)
  • 全身の筋肉がやわらかくなり、ぐったりする
  • けいれんを起こしたり、精神状態の異常が出る(幻覚、錯乱 など)

【過量投与を防止するための注意】

過量投与による症状は、薬補充の後すぐに症状があらわれることが多いため、薬の補充後は、特に上記の症状に注意してください。

(2)薬(ギャバロン髄注)による副作用
  (ポンプシステムは正常に機能している場合)

薬(ギャバロン髄注)による副作用として、頭痛、脱力感、一時的な血圧低下、感覚減退、眠気、めまい、吐き気、悪心などがあわられることがあります。これらの症状が強く認められた場合には、直ちに担当医師に連絡し、受診してください。

ITB治療方法

(3) その他、ポンプ、カテーテルによる副作用

ポンプ、カテーテルの植込み部位に感染症が発生することがあります。この場合は手術の傷口が痛む、赤くなる、腫れる、などの異常があらわれます。また、ポンプやカテーテルが植込んだ位置からずれたり、漿液腫(体液が術部にたまってしまうこと)、髄液のもれ、などが起こることがあります。これらの症状があらわれた場合には、直ちに担当医師に連絡し、受診してください。
この治療法では、上記のほか、予期しない副作用が起こる可能性がありますので、痙縮の急激な変化や、異常な症状の出現、身体の変化については、ご自分で判断せずに、直ちに担当医師あるいは病院の相談窓口にお知らせください。

特に異常な症状や離脱症状があらわれた場合、あるいはポンプのアラーム音が鳴った場合は、直ちに病院に連絡し、担当医師の指示にしたがって受診してください。ポンプの使用中に重大な副作用があらわれた場合には、適切な処置が必要となります。

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